#02 意識的に無意識

大学生のまひる(真昼の深夜) が日常的に考えていることや悩んでいることを、映画や本、音楽などからヒントを得ながら”現在地”として残してゆく不定期連載『よどむ現在地 』。第2回は、Podcastやラジオを聴き始めてから芽生えた変化について書いています。


目次

意識的に無意識



 過去の自分の延長上に今の自分がいるとはどうしても実感できない日々が続いている。過去の思い出はそれぞれ映画のようで、どこか他人事だ。

 性格や考え方は今まで何度も変化してきているけれど、過去は全て映画のようにパッケージ化されて切り離されてしまっているので、今の自分が”変化した”ということになかなか気が付かない。

 近頃、何かとこれまでの自分を振り返る機会があった。無駄なロールモデルに自分で縛られていたことや、先天的な性格だと思っていたしその呪縛からは解放されないだろうと思っていた性格は実は後天的なものだったと気づくこともあった。その一つが”元来自分は物事を真似るのが好きで得意な人間だった”ということだ。聞くところによると、小さい頃は、阪神タイガースの投手のピッチングを真似ては祖父を笑わせていたらしい。(上手かという尺度は存在しなかったし、必要ないと思っている)

 そして、最近、自分が良いなと思ったことを真似ていると、思わぬ副産物を得るということが往々にしてあるということに気がついた。

 現時点で気がついた変化は三つあり、一つ目が笑い方、二つ目が話の聞き方、三つ目がギャルマインドである。

笑い方



 先に述べたように、自分は小さい頃から真似が得意で好きだった。その裏返しとして、あらゆること(喋り方や考え方など)に関して周りに影響されやすく、そして、流動的に変化してきた。その都度、一番身近な人のそれに影響されてきた。

 高校時代から浪人期にかけて、影響されるほどの相手に出会うことができなかった。そのため、例えば話し方や考え方などでは自己流が確立された。しかし、唯一確立されなかったのが笑い方である。特に声を出して笑うのが苦手で、声を出すほど面白い時にでも、声の出し方がわからず、思うように楽しめないということがよくあった。

 浪人期から好んで聞いているラジオがある。『ニチレイ プレゼンツ オードリーのオールナイトニッポン』だ。


 自分はこの番組に人生救われたと言っても過言ではないほど、心の拠り所になっていた。二人の話が好きで毎週楽しみにしていた。そこで、あるとき思い立ったのだ。

 この二人の笑い方を真似してみよう

 二人とも、少し乾いた笑い方をするのが特徴的だったので、真似をするのは簡単だった。笑いどころでは過剰に声を出して笑うということを意識的に始めた。

 そして、意識せずとも声を出して笑うことができるようになってきた頃、あることに気がついた。性格が明るくなった。


 自分で思うように笑うことができるようになったことで、些細なことでも笑うことができるようになった。表情は柔らかくなったし、文字通りよく笑うようになった。人からも言われたので、客観的に見てもそうだったのだろう。

 意識的に"笑い方"を真似たことで、無意識に性格にまで変化が及んでいた


話の聞き方



 自分は頑固で、自己中心的な人間なので、特に高校時代は相手の話を最後まで聞かずに遮って話し始めるという最低なことを日常的にしてきた。相手が言いたいことは最後まで聞かなくてもわかるし、”それはもうすでに考えた”ということがたくさんあったからだ。それにしても、話を遮られるのは非常に不快なものなので、反省している。

 好んで聞いている「POP LIFE: The Podcast」という番組がある。

 その番組では異常に(少なくとも僕はそう感じた)相槌を打つのだ。特に田中宗一郎さん。それが新鮮で、驚きだった。そして、聞いているうちにその相槌が気持ち良くなってきたのだ。そうなると、もちろん意識的に真似をする。最初はただ真似をしたいから真似をしただけなのだけれど、ある変化が生じたことに気がついた。相槌を真似すると、相槌を打つことが楽しくなるので、相手の話を聞くことができるようになるのだ。思わぬ副産物だった。

 つまり、意識的に相槌を真似することによって、無意識に人の話を聞くことができるようになっていた


ギャルマインド



 自分は、感情を表に表現することが苦手で、苦手な理由の内訳はきっと「表現が下手」なのが半分、「恥ずかしい」のが半分だ。


 これまた、「POP LIFE: The Podcast」の話なのだが、この番組の中で令和GALSの三人組が登場する。(詳しい紹介は割愛しますので番組を聞いてみてください。)


 令和GALSとまで言っているだけあって、彼女たちは(ちょっと大人な)ギャルだ。「超最高!」「まじクソだね」のような言葉遣いをする(自分はこんな言葉使いしたことがない)。以前の僕であれば、このような喋り方をされると、拒否反応を示していたのだが、(自分で言うのもなんだけど)寛容になってきたので、令和GALSの喋り方が心にすっと入ってきた。そして、令和GALS回は複数回続くので、単純計算で数時間聞き続けることになる。そして、令和GALSの御三方は著書『令和GALSの社会学: メンヘラ、フェミニズム、エンパワーメントをガチ語り!』も出版されているので購入して読んだ。

参考資料

 これまた、読了するまでに数時間かかった。そして、締めて10時間以上も令和GALSの語彙を浴び続けた自分には、少しばかり「ギャルマインド」が芽生え始めたのだ。そして、その芽生えたギャルマインドをきっかけに、あらゆることに抱く感情に対しギャルマインドを真似てみた。

 そうすると、例えば音楽を聞いても、従来ならば「いいな〜」くらいのものだったのが、「超最高!」と思うようになったりする。「超最高!」と”思う”と何が変化するのかと言うと、これまでより感情に素直になる。そして、感情の大きさが100倍くらいになる。つまり、100倍幸せになるのだ。基本的にギャルマインドはポジティブだから、辛い時には「まじクソだわ〜」と思っておけば、ポジティブに「クソ」と思える。ネガティブな感情も10分の1くらいに抑えることができるのだ。


 したがって、意識的にギャルマインド(と言うより言葉遣い?)を真似ることによって、無意識に感情に素直になって、感情が大きくなった


 この三つ目の変化が訪れたあたりで、これら三つの共通点に気がついた。

 気に入ったことを意識的に真似することによって、無意識的な副産物を得る。

 このことに気がついたので、気に入ったことは積極的に真似していきたいと考えるようになった。


(おわり)

※これは2021年3月9日に書いた文章を加筆編集した文章です。


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